風景が日常と違えば違う程 現実から逃避出来る |
前回からの続きです。
珍坂トンネルの全長は1563m。
残念ながら歩道は無い。
交通量は少ないとはいえ
コンクリートに響くエンジン音に追い立てられるように
ペダルを踏んだ。
そして出口の光がパッと大きくなると
それに伴って視界もパッと広くなる。
トンネルを抜けて緩やかな坂を下った先には
これまでの、山に挟まれた谷あいの集落とは打って変わって
広い空を持った平野が現れたのである。
湿り気の無い空気は透明で
田植えが終わったばかりの田んぼには
5月の青空が映りこんでいた。
下り基調の快走路と相まって
私たちは
田んぼの上を撫でる「風」の様に走る。
「石見グランフォンドで見た
島根県の田園地帯みたいだ!」
やがて国道482号線に合流し
標識に従って神鍋高原へ進路をとると
それまでの下り基調が上りに転じる。
しかし急峻な峠道が現れるわけでは無い。
「この位の勾配なら・・・
許せるかな・・・」
バスク輪さんが呟くように
二桁の勾配が現れる事は稀で
ダラダラと一定勾配が続くのである。
「しかし、交通量、多いね」
シーズンオフのスキー場への道など
寂しいものだと思っていたら大間違い。
沿道の飲食店は賑わっているし
但馬ドームでは駐車場の警備員が忙しく動いていた。
私たちが目的地に設定していた道の駅も、駐車場は満杯。
レストランはもちろんのこと混雑していた。
少し下ったところにある食堂に逃げ込んだ。
バスク輪さんにある提案をした。
「せっかくここまで来たんだからさぁ~
神鍋高原らしい写真撮って帰ろうよ。
夏のスキー場の景色、撮ろう。
場所は分かるから・・・」
国道沿いの食堂から少しわき道にそれるだけで
キャベツ畑や木々の中を走る如何にも高原らしい道路に出る。
それを回り込むようにスキー場へ向かう。
やがて、こんもりと緑色に膨らむ神鍋山が見えた。
「あれだ!」
スキー場の駐車場を通り抜けると
冬の白銀の世界とは全く違う
夏のスキー場があった。
5月の透明な青空に新緑の絨毯が眩しい・・・
動かないリフトが
ついこの間の冬の記憶を遠い過去と錯覚させそうである。
道の駅から少し離れるだけで
喧騒とは無縁の静かな風が吹いていた。
「夏のスキー場はこうでなくっちゃ・・・」
明らかに下界とは違う風景を前に
やっと、自転車でここまで来た充実感が込み上げてくる。
風景が日常と違えば違う程
現実から逃避出来るのである。
ここから復路も100kmオーバーしなきゃならないんですよね・・・
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