この判断が果たして吉と出るのか凶と出るのか・・・ |
前回からの続きです。
「3、2、1、スタート!」
クリートをはめる音が連鎖した後
野生化したロードバイクの群れが動き始めました。
コンディションはヘビーウエット!
ローリングスタートがいつもより慎重なのが
その遅いスピードから感じられました。
最高地点のホッブスコーナーからレッドマンコーナーは連続する下りカーブ。
密集した集団が突入する時
自分の声がいつもより殺気立っている事に気付きます。
「ラインキープぅううううううう!」
「ラインキープぅううううううう!」
「ブレーキぃいいいいい!」
ハンドルから伝わるグリップの低さが声を大きくしたのです。
ヘアピンの上りからバックストレートに来ると
大きなプロトンを形成していた集団は
細長い蛇の様に変化しました。
続くアトウッドカーブはこのコース一番の下りの高速コーナーです。
いつもなら下りの勢いを利用して
モスエスからウイリアムズコーナー手前まで駆け上がるのですが
ヘビーウエットのアトウッドカーブは減速せざるを得ません。
「フクちゃん、モスエスの上りだけでも10秒は損してるね!」
黒光りするアスファルトに
どれだけ神経をすり減らして走ればいいのか・・・
波打ち際の岩場こびり付く海苔の上を走るがごとく
グリップしないロードバイクをコントロールしなければならないのです。
はやる気持ちを抑えることが出来ない者が
アスファルトに潜むトラップに次々と落ちていく!
落車したら一巻の終わり・・・
4時間ソロに出場した臨時漕会の3人は
列車を形成したままヘビーウエットコンディションに立ち向かいました。
先頭は私とフクちゃんで回す。
初レースのショーン君は戦々恐々としながらドラフティングの恩恵に授かっていました。
そして先輩たちのレースをじっくりと観察していたのです。
エンデューロレースの大原則は究極のマイペースを追及する事。
決められた時間内に最も速く走るペースで走るのです。
しかしこれが言うのは簡単ですが、やるのは難しい。
まず、どんなペースが最も速く走れるペースなのか?
自分を知る事が最大の難関と言えます。
更にエンデューロレースは単独で走るものではありません。
トライアスロンの様にドラフティング禁止でもありません。
したがって、究極のマイペースを維持しながら
ドラフティングを利用して走るテクニックが必要となってきます。
自分のペースより空気抵抗の分だけ速い奴の後ろの付くのがベスト。
自分のペースでいとも簡単に追いついてしまう奴の後ろに付いても遅くなるだけ。
自分よりも速い奴の後ろに付くから下駄をはかせてもらえるのです。
短い距離なら少し無理をして速い奴の後ろに追いつくか
自分をオーバーテイクしていく奴の後ろに付くか・・・
それを瞬時に判断して調度いい奴の後ろを渡り歩くのが
私とフクちゃんのコバンザメ作戦(別名、他力本願走法)なのです。
私とフクちゃんは先頭を回しながらコバンザメ作戦を実行していました。
路面もかなり乾いてきました。
グリップが戻ってきたことによって
コーナーの進入速度も速くなってきました。
ちょうど、向かい風のホームストレートを通過する時
臨時漕会の関係者が陣取るピットから声援が聞こえました。
「ショーン君も牽けよぉおおお!」
私は前を牽きながら、ふと考えました。
(それもそうだよな・・・)
ショーン君は私とフクちゃんより20歳も若い。
そして最近、ローラー台でトレーニングをしているというではありませんか。
(こいつに前を牽かせれば
究極の風よけになるかもしれない)
私はヘアピンをダンシングで駆け上がった後
バックストレートのかかりで後ろを振り返りました。
「そろそろ、前、牽くか・・・」
ショーン君とアイコンタクトすると
彼は一瞬「えっ?」という表情をしました。
その様子を見ていたフクちゃんがいたずらっぽく笑う。
私は有無を言わさず先頭交代のハンドサイン。
私はラインを左に変更して
先頭の視界をショーン君に譲りました。
レース開始から1時間40分を過ぎて
遂にショーン君が臨時漕会列車の先頭に立ったのです。
この判断が果たして吉と出るのか凶と出るのか・・・
レース中盤をもって
臨時漕会列車に変化が訪れたのです。
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