去年の自分の背中が見えた時 |
またまた前回からの続きです。
「あれ?
この坂・・・」
「去年より軽く上れてる・・・」
そう思うのは私の錯覚か?
いやそうじゃない。
心拍は常に160オーバー
去年の私と同じなら、かなりキツイ筈なのです。
ただ、他人と比べて上りが遅いという事に変わりはありません。
サイクリングロードでは住友輪業さんの列車以外に抜かされた記憶はあまり無い・・・
しかし、この山岳地帯に入って
ひとり、ふたりとオーバーテイクされ始めました。
上りで離されて下りと平坦路で差を詰める・・・
これの繰り返しでした。
上りが苦手な私としては
この山岳地帯のロスを最小限に抑えなければなりません。
ロスを最小限に抑えれば押さえるほど
アゼリア館からの高速巡航で稼いだタイムがそのまま勝利へ繋がります。
私にとっての勝利とは何か?
それは去年の私に勝つ事です。
この悪天候の中でも去年の私に勝つ事が私にとっての勝利・・・
他の誰と競っているわけでもない
7キロのヒルクライムを経てゴールした時
去年の私よりもバージョンアップした私が待っていればそれでいい・・・
ふと気が付くと後ろから音がする・・・
木々が生い茂る静寂に包まれた世界に私の呼吸音しか聞こえないはずでした。
しかし後ろからどんどん近づいてくる音は明らかにロードバイクではない。
ゴォー
MTB?
私は一台のMTBに圧倒的な速さの差を見せつけられながらオーバーテイクされました。
「うわっ!はやっ!」
あまりもの速さの違いにただ呆気(あっけ)にとられるのみ
「俺ってやっぱり遅いよなぁ・・・」
左折して県道90号線に入ると道幅は広くなり視界が開けました。
間もなくこの大会唯一のチェックポイントです。
スタッフの方にゼッケンを確認してもらい
名簿に記載された私の名前にチェックを入れてもらいます。
オニギリやケーキなどの補給食が用意されていましたが
私はチェックを済ませるとすぐに走り始めました。
降車して補給をとる時間が惜しかったのです。
しかし、ただ闇雲に補給を摂らなかったのではありません。
ポケットにはゼリーを忍ばせていましたし
ヴァームを飲んで無補給でも走り切れる準備もしていました。
考えた上で、そして私の経験から
チェックポイントで補給しない方が
最も速いタイムで雲海の53キロを走り切れると判断したのです。
チェックポイントを出ると岡山国際サーキットへ続く坂を上ります。
なかなか上りごたえのある坂を
時にはダンシングで、時にはシッティングで上りました。
この雲海にエントリーしたのもこのサーキットを走るためです。
岡山国際サーキットが右手に見えてきた時
本番のエンデューロレースの事を考えずにはいられませんでした。
颯爽とホームストレート前を走り抜ける妄想を抱きながら
アゼリア館へ続くワインディングロードを下る。
そしてアゼリア館前をスタッフの誘導に従って左へ・・・
ここからゴール前の坂までは
私が最も得意とする下り基調の平坦路。
この区間でタイムを稼ぐ!
し・か・し・・・
「なんじゃこりゃぁああ!」
低気圧が東へ進む。
そして雨は上がった。
しかし前線が通過した後に待っていたのは強烈な風でした。
「なんでこっから向かい風やねん!」
よりによって最もタイムを稼げると思っていたところで向かい風!
私は肘を曲げ前傾を深くしました。
脇を締めステムに顔を近づける・・・
上下する太ももが胸に当たりそうなくらい
前面投影面積を小さくしました。
エアロポジションをとる事が
立ちはだかる風と闘う唯一の術だったのです。
荒れ狂った強風は風向きも風速もでたらめでした。
まるで渦を巻きながら川下から川上へ攻めて来ます。
「うぉおおおお!」
横風がバイクを倒そうと吹きつける!
思わず蛇行して体制を立て直す!
向かい風がバイクを押し戻す!
大腿四頭筋の出力を上げる!
私の前に去年の自分の背中が見える気がしました。
彼は地面すれすれを滑空するツバメのように
蛇行する川沿いを走りぬけていきます。
風に苦しむ私をあざ笑うかのように
彼の背中はどんどん小さくなっていく気がしました。
やがて前方に最後の信号が見えた。
その信号を過ぎればゴールまで7キロのヒルクライム。
誘導するスタッフの方が声を掛けてくれました。
「ここから先は上りだけです」
「ハイ!」
タイムを見ると1時間40分を過ぎたところでした。
残り7キロのヒルクライムにどれだけの時間を費やす事になるのか?
参考になるのは去年の比叡山ヒルクライムの結果でした。
比叡山ヒルクライムは計測距離8.4km、平均斜度4.2%・・・
ただし計測区間のうち2kmは平坦路です。
そこを私は32分台で走っています。
雲海の最後の7キロの上りは
比叡山よりも過酷である事は日を見るより明らかでした。
去年の雲海のタイムは2時間18分台。
少なくとも38分以内で残り7キロの上りを走り切らなければ去年の自分には勝てない。
そして、さら脚と消耗した脚では違う・・・
雲海の場合、それまでの四十数キロで消耗した脚で上らなければならないのです。
信号からダンシングでスタートしました。
そして勾配が急になって来るとシッティングに切り替えました。
果たして雲海の上りで私の大腿四頭筋は死なずに使い続けられるのか?
県道から左折してすると雲海へ続く道は勾配を急に増す。
九十九折れの坂が多くなりシッティングでは耐えきれない勾配が頻発します。
梅の木の向こうに棚田が見えて
その棚田の向こうに民家が点在する・・・
私の呼吸音とは裏腹に日本の典型的な山間部の景色は静かでした。
そして15%の坂に立ち向かいます。
去年は消耗して這うようにしか上れなかった坂を
少なくとも今年は蛇行せずに登れた。
ダンシングによって標高がグッと上がる・・・
去年の自分より上れてる・・・
ゴールが近づいて来るにつれて期待が高まってきました。
「これはいけるんじゃないか・・・」
雲海のゴールは一度下ってから緩斜面を上ります。
私はギヤを重くしてダンシングに切り替えました。
最後の最後にもがいてから下ってゴール!
「コギコギさん、速かったんじゃないですか?」
「そ、そうかな・・・」
「僕はギリギリ2時間を切りましたよ」
「リザルトはどこ?」
「あっちです」
2時間14分14秒・・・
去年より4分18秒速い・・・
「まっ、こんなもんかな」
走行距離…53.75km
時間…2:13:45
平均速度…24.97km
最高速度…60.23km
平均CAD…79
積算距離…33207km
消費㌍…1538kcal
補給食…0kcal
心拍…Avg.164 Max.176
ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。
ちなみに住友輪業さんはこの日の最速タイムでした。
去年、2時間切りのタイムだったクライム君は
今年は悪天候のため最速は狙わなかった様です。
チームヴェルジェの皆さんは新入部員を守る様に
列車を組んでゴールしてきました。
悪天候でしたが、なんとか去年の自分に勝てました。
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それが自分の目標であり続けたらいいなと思います。
ぼくも,がんばります。
明日は,伊吹山ヒルクライムです。
今年はコンディションに恵まれませんでしたが、来年こそは良コンディションの中、思いっきりタイムアタックに挑んでみたいですね。
目指せ、1時間50分切り!
絶対ヤダ!!