だるま珈琲のマスターが自転車乗りになった日 |
またまた前回からの続きです。
ロードバイクデビューと同時にビンディングデビュー・・・
それだけでも驚きなのに万葉岬デビューまでも強行しようとしていました。
坂を登るのにシフティングは必須ですが
それさえも万葉岬までの道のりでレクチャーの付け焼刃です。
万葉岬の上りが始まって、すぐにギヤを使い果たしてしまったマスターは
大きく蛇行する事で、なんとか登り続けていました。
しかし出来たてのホヤホヤの初心者にとって万葉岬の坂は甘くありませんでした。
右方向へ蛇行していたロードバイクを反転して左方向へ蛇行しようとした時です。
一瞬、ロードバイクは坂に対して真っすぐになる。
その時、マスターが発生するパワーでは足りなくてロードバイクは推進力を失いました。
殆ど前へ進まないロードバイクにバランスを崩してふらつくマスター・・・
「危ない!」
私は思わず声を上げました。
マスターのロードバイクは一瞬静止した様見えました。
足を着くならこの瞬間が最後です。
しかし、マスターは、なかなか足を着きません。
ビンディングに慣れていないから外れないのではありません。
マスターがペダルから足を外そうとしていない様に見えました。
静止していたロードバイクがゆっくりと左側へ傾き始め、
やっとマスターは足を着こうとビンディングを外す動きをしました。
しかし時すでに遅く、足は着いたもののパタリという感じで倒れてしまいました。
「だ、大丈夫ですか!」
10~15mほど先行していた私は反転してマスターのところへ駆け寄ります。
「コギコギさん、大丈夫です」
「ここは勾配が急ですから再スタートは難しいでしょう・・・
マスター・・・歩きますか?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「いえ・・・・」
「?」
「コギコギさん、乗らせて下さい!」
マスターはそう言うと再びロードバイクに跨りました。
マスターにとって「歩く」と言う事は負けを意味していたのでしょう。
私の提案を受け入れる事無く走り始めたのは譲れない意地・・・
それは初心者も上級者も関係無いのです。
案の定、ひと漕ぎ目から大きくふらつきます。
しかしマスターはパワーを振り絞り
大きく蛇行しながら動き始めました。
マスターはヘイジさんを目標に前へ進む。
そして私が最後尾からマスターを追う。
私はマスターの背中を祈るような気持ちで見ていました。
ブラインドコーナーの先に、また坂が現れる・・・
「マスター!まだ続くよ!」
マスターの呼吸は荒く
冬の夜明け前の一番寒い時間に額から汗を滴らせていました。
絶対に足を着かない・・・
大きく蛇行しながらも、ひたむきに前へ前へ・・・
「マスター!もう少しだ!
この急坂を越えれば頂上だ!」
「がんばれ!もうひと息!」
「よっしゃぁあああ!頂上やぁあああ!」
ペダルが軽くなってスッと前へ進む。
坂を登り切った直後にペダルから感じる解放感・・・
私達は万葉岬のビューポイントへ向かいました。
まだ夜が明けきらない海に灯台の明かりが点滅していました。
大きな船が相生湾に入港しようとしています。
操舵室の明かりとマストのライトが明るく見えるのは
まだ太陽が登っていない証拠でした。
そんな時間に私達よりも先に相生湾を眺めている人がいたのには驚きました。
「おはようございます」
軽く挨拶をすると
その年配の男性は自分がそこに居る理由を語り始めました。
「今日はね、日本で2番目に大きな船が相生湾に入港するんだ。
私はね、それを見に来たんだよ」
どうやら船が好きな人みたいです。
続けて船の全長やら明石港から、ここまでどのくらいの時間で来ただとか
私には、あまり興味の無い話だったんですが
最後に、その男性は私達に質問してきたんです。
「ところで、お兄ちゃんら
この坂を自転車で登ってきたのか?」
こういう質問は私やヘイジさんは慣れているのですが
マスターには初めての質問でした。
私とヘイジさんはマスターに答えてもらおうとニヤニヤしながら何も答えませんでした。
するとマスターは少し恥ずかしそうに男性の質問に答え始めました。
「ハイ!自転車で登りましたよ」
「ふぇえええ!凄いなぁ!お兄ちゃんら・・・」
お約束の反応。
この反応は悪くない。
マスターはビックリされて嬉しい筈です。
続けて男性は質問します。
「お兄ちゃんら、こんな坂、自転車で登ってしんどくないんか?」
マスターが控えめに答えます。
「ええ・・・そりゃあ・・・息、上がりますよぉ・・・僕は・・・
あの二人は平気かもしれませんが・・・」
マスターは私とヘイジさんを指さして、そう答えていました。
この年配の男性は、マスターが出来たてのホヤホヤの初心者なんて
これっぽっちも思っていなかったでしょう。
出来たてのホヤホヤの初心者なのに
その男性は、まるでアスリートでも見るかのようにマスターを見ていました。
それが私には可笑しくて・・・
私とヘイジさんはニヤニヤしながら、何もしゃべりませんでした。
「それじゃあ、そろそろだるま珈琲へ帰ろうか」
私達は、夜が明けた相生湾を走り始めました。
万葉岬を下って鰯浜から野瀬へ下り基調の直線が続きます。
その冷たさと清らかさを頬に感じながら私達は滑空する様に、
だるま珈琲へ向かいました。
それはまるで一陣の風のようでした。
そしてその風の中に、マスターは確かに居た。
そう、マスターは自転車乗りになったのです。
ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。
その後、マスターは単独で何度か万葉岬にのぼっています。
もちろん店を開ける前にですよ。
そしてマスターは臨時漕会のメンバーになりました。
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自家焙煎の店 だるま珈琲
住所: 〒678-0005 兵庫県相生市大石町19−10
電話:0791-22-7880
皆さんから見れば小さな岬かもしれませんが、あの岬を登ったという感動が、今まで見聞きしていた自転車の楽しみを倍増してくれました、もっともっと走って次は遠くへ行く楽しさも味わっていきたいです。
このブログは自分の事を書いていただいてますが他人の物語を見ているように楽しめました(^^)
また時間がよろしければレッスンお願いしますm(__)m
マスターのデビューライドはすでに伝説となりつつありますね。
そしてこれからどんな伝説を作っていってくれるのか・・・
楽しみです・・・本当に楽しみです!
自分の最初の頃は坂なんてとんでもなく、万葉なんて見て見ぬ振りしてましたから。
超ド級のデビュー戦でしたよ!立ち会えて光栄でした。
また、宜しくです(*^^*)
少し下ってクリートをはめてから…と教わりましたが、 私は きっと坂の下まで下ってしまいますから、永遠に頂上にはたどり着きませんね(^^;;
マスターは この後も朝練で万葉アタックにチャレンジしておられるとか! 見習いまーす!!
最高です!
仲間入り,そして,すばらしい門出,おめでとうございます!
コギコギさんも,マスターも,会ったことがないのに,ぼくがこんなに,すごくうれしいのはなぜでしょう。
仲間として感じるからでしょうか。
他人事ではなく,コギコギさんを通して,一年前の自分をほめてもらったような気がするからでしょうか。
マスターにとってはこれから万葉岬がホームグラウンドになるのでしょうか?だとすると短期間でものすごい走力を獲得されるかもしれませんね。さらなる伝説が生まれそうな予感です。
さて、岬で話しかけて来た人、私と同じ趣味を持たれているようですね。相生はいろんな船が来ますから船ファンにとっては重要な場所の一つなんですよ。
自転車の話しを聞いて下さいました。
私にとって、マスターのロードバイクデビューは
「ついに来たか!」と言う感じでした。
是非、ロードバイクの楽しさを満喫してください。
いつか、ロングライドに出かけましょう。
そして、いつか小豆島の寒霞渓を登りましょう。
その時は、お手柔らかに・・・
残念ながら記憶にありません。
でも、坂は、最近まで避けてたな。
はりまシーサイドロードを走る時も
万葉岬はスルーしてました。
でもこれからはマスターを見習って登ろうかな・・・と、思う。
とっても早起きしないといけません。
今は乗りたくって仕方ないんでしょうね。
出来る事なら、プレッシャーに思う事無く
永くロードバイクを愛して欲しいですね。
もちろん、rikiさんも私の自転車仲間の一人だと思っています。
マスターが万葉岬を登る姿を
ロードバイクを乗り始めた頃の自分に重ね合わせる気持ち
よぉ~く解りますよ。
rikiさんが、この一年で見違えるようになった様に
マスターも一年後に
見違えるようになってくれるんじゃないかと思っています。
それが楽しみでね・・・
成長する自分を感じると更に面白くなる。
いつの間にか
万葉岬なんて鼻歌歌いながら登れるようになるかもしれませんね。
万葉岬に伝説が生まれるといいですね。
今まで見えなかった景色を見れるようになったのかもしれませんよ。
夜明け前の万葉岬なんてワクワクしますもんね。
四季折々に移り変わる万葉岬を楽しんでもらいたいですね。
ブログの記事は、毎回毎回、手を抜かずに書いているつもりです。
どこを読んでも読みごたえのあるブログにしたいです。
またコメント下さいね。
楽しみにしています。