23年ぶりの時を越えて、元プロ選手に再会した日 |
土曜日の夜、私はドキドキしながらだるま珈琲にいました。
「マスター、ついに会うんですよ!
ほら、この前言ってたでしょ・・・
私の大学の後輩でトップレベルの自転車選手がいたって話し・・・」
「ああ、ひょんな事から連絡がつながったっていう・・・」
「そうそう、比叡山ヒルクライムレースの後に立ち寄った
茶丈藤村(さじょうとうそん)という和菓子屋さんの女将さんと
その後輩が友達で・・・連絡が付いた・・・
23年ぶりかぁ~」
私はまるで初めてのデートに出掛ける高校生の様に
期待と不安に胸を膨らませながら待ち合わせの時刻が訪れるのを待っていました。
23年という時の流れが彼をどのように変化させているのか?
ちゃんと話しが出来るだろうか?

だるま珈琲を出て相生駅の南口へ向かう。
真っすぐ歩いて行く先に人影が・・・冨田か?
歩く脚が次第に早歩きになる。
「おおっ!冨田!」
「コギコギさん!うわぁ~久しぶりですねぇ~」
「冨田、でかくなったなぁ~」
「ええ、現役を引退して30kg太りました。
コギコギさんは逆に引き締まりましたねぇ~」
たったこれだけの会話で
23年間のブランクがまるで無かったかのように話し始めました。
私と冨田君は23年という時空を超えて
青春時代のあの時へタイムスリップしたのです。
大学時代、私は大学スポーツ新聞の編集局長として
自分が担当するクラブの活躍を記事にしていました。
一方、冨田君は自転車競技部に籍を置き
日本の大学生の中ではトップクラスの成績を収めていました。
しかし、私の担当は自転車競技部ではありませんでしたし
当時、私は自転車に対して何の興味も抱いていませんでした。
ところがどういうわけか馬が合い
冨田君は私の下宿に入り浸りになっていました。
彼は私の興味とは関係なく、しょっちゅう自転車の話をしていました。
レースでどういう展開になってゴール前でどうなったとか
4講目の授業に出る前に琵琶湖一周してきただとか
落車で恐ろしい目にあったとか・・・
私は自転車に興味があったわけではなかったのですが
彼の話を珍しい話題として聞いていました。
しかし、今から考えると
冨田君が私の下宿で、止めどなく話していた自転車の話が
私の今の自転車生活の
下敷きになっている事は間違いまりません。
私と冨田君は居酒屋のカウンター席で
お互いの空白の23年間を埋めるべく語り合いました。
「冨田、憶えてる?
俺がMTB買うからと冨田に自転車屋さん紹介してもらって買いに行った事・・・
納車された日にコギコギさん貸して下さいって言って
新車のMTBに乗って琵琶湖の方まで行っちゃった事・・・」
「そんな事、ありましたかねぇ~」
私がMTBを買ったのはスポーツとして自転車に乗ろうとしたのではなく
オシャレとして自転車に乗ろうと思ったのでしょう。
当時バブル真っ只中・・・
MTBに乗る事は、どこかバブリーな香りがしていました。
ところがこのMTBがきっかけで私の自転車人生が始まったのでした。
大学を卒業してからも細々と自転車に乗り続ける事となったのです。
私の記憶に残る冨田君は
自転車が強い選手というよりも自転車が大好きな少年という感じでした。
怖がりで、淋しがりやで、人懐っこい・・・
しかし、ひとたびロードバイクに跨ると
溢れんばかりの才能を発揮して次々と勝っていく・・・
しかし天は二物を与えなかった・・・
溢れんばかりの才能と一緒に
天は彼に膝の故障という試練を与えたのです。
私の記憶に残る最後の冨田君は
大きなレースで成績を残しながらも膝の故障にもがき苦しむ姿でした。
彼が卒業してからの人生は居酒屋のカウンター席で
冨田君が口にするまで私には知る由もありませんでした。
しかし、23年の時が経ったからこそ、やっと語れるようになった・・・
そんな気がします。
彼は膝の故障を抱えたままプロの実業団チームに入団して
日本のロードバイク界の一番高いところで
壮絶な戦いを繰り広げるほどの選手になりました。
ただ、私が心配していた膝の故障は
最後の最後まで、彼を苦しめる手を緩めなかったようです。
しかし彼は確かに眩しく輝いていた。
25歳で引退した彼は、自転車を人生から切り離すように断ち切った。
十数年間、一切自転車に触らなかったそうです。
しかし、ひょんなことから彼の自転車生活は再会します。
子供達に自転車の安全な乗り方を指導する事を頼まれて
それがきっかけで再びロードバイクに乗る日がやってきたのです。
それが数年前・・・
彼は自転車乗りが多く訪れる茶丈藤村へ立ち寄るようになり、
私もhiroさんに誘われて茶丈藤村へ行った。
それがきっかけで23年ぶりに再会する事が出来たのです。
もし冨田君が自転車の世界に戻って来ていなかったら・・・
もし私が自転車に乗り続けていなかったら・・・
もし私がブログをやっていなかったら・・・
もしhiroさんが茶丈藤村へ誘ってくれなかったら・・・
もし茶丈藤村の女将さんが冨田君と友達でなかったら・・・
多くの「もし」が重なって
私と冨田君は再会する事が出来ました。
「冨田・・・俺が自転車ブログやって5年・・・
今では沢山の人達が読んでくれるようになった。
冨田が自転車を再び乗り始めて4年ほど・・・
京都自転車競技連盟の役員になって自転車界を草の根的に育てる仕事をしてる・・・
神様がいるのなら絶妙のタイミングで再会させてくれたんじゃないかと思う・・・」
「コギコギさん・・・僕は今、純粋に自転車に乗る事が楽しい・・・
プロの時には無かった感覚なんです。
プロの時は峠の途中で止まるなんて許されなかった・・・
でも今は峠の途中で止まって綺麗な景色を写真に撮ったりしてる。
まさかコギコギさんが自転車乗りになってるとは思いませんでしたが
こういうタイミングで再会できたのは、縁、なんでしょうね」
二人の会話が弾むのは絶妙のタイミングがなせる技・・・
その夜は久しぶりに梯子しました。
大学時代のあの日の頃の様に
冗談を言い、笑い、ふざけて、そして歌った・・・
翌日、ミッドナイトエンデューロの振り返りを
だるま珈琲でモーニングさんと行う事になっていました。
もちろん私は冨田君にアドバイスを頼みました。
トレーニングに対する考え方や走りに対するアドバイスなどを
理路整然に語る彼を見て
「こいつ、やっぱりプロやったんや・・・」

昼からは車で私の地元を案内しました。
と言っても、私のホームコースである、はりまシーサイドロードを車で観光したのです。
折しも室津では八朔のひな祭りと言って
八月のひな祭りが行われていました。
瀬戸内の漁村を二人して歩きました。
ノスタルジックな細い路地を23年の時を埋めるべく
お互いの身の上を話しながら歩きました。
こんなに長い距離を冨田君と歩いたのは初めてです。
私が毎年、自転車お守りを買っている賀茂神社から
瀬戸内の穏やかな海が見えました。
ところどころに島が見える。
「あ~あ~明日から仕事かぁ~
京都に帰りたく無くなっちゃいますねぇ~」
「冨田、このあと万葉岬に行こうか」

この二日間、まるであの頃へタイムスリップしたようでした。
助手席に冨田を座らせて夜中に琵琶湖までドライブした時と同じ気持ち・・・
彼がプロ選手として飯を食っていた頃、
彼から影響を受けた私は細々と、はりまシーサイドロードを走っていました。
彼が引退してサラリーマンとして走り始めた頃、
私は山陰の田舎道を黙々と走っていました。
そして彼が再びロードバイクに乗り始めて4年・・・
私は自転車ブロガーとして、はりまシーサイドロードを走っています。
今、彼と自転車の話をしながら万葉岬の夕焼けを眺められる・・・
走り続けていて良かった。
「コギコギさん、はりまシーサイドロードはいいコースですね。
次は一緒に走りましょう」
23年前と違うのは、次に一緒に走る約束をするところ。
そこだけが、嬉しい違和感・・・
ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。
冨田君と再会して23年後にお互いの自転車人生がクロスしました。
人の縁とは不思議なものですね。
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本当に良かったですね(^^)d
必要な時間をちゃんと計算して絶妙のタイミングで引き合わせてくれている様に思います(^-^)
師匠は 元々 自転車大好き少年だったのかと思っていましたが、自転車との出会いは こんなエピソードが有ったんですね!
こちらの心まで 温かくなりました。(^-^)
実は、私も学生時代親しくしていて疎遠になった人を何気にFacebookで検索したら、地元でロード乗ってはるようでした
わたしのはそこ止まりで連絡とったりもしてませんが、同じ趣味もってることに嬉しさを感じました
まさに一緒にタイムスリップさせていただきました。
だるま珈琲で寛いで、万葉岬の美しい景色に彩られて最高のステージでの再会となったのではないでしょうか?
「縁」、大切にしたいですね。
細い縁の糸が絶妙なタイミングでつながることが,人生にはいくつかありますよね。人生ってステキです。
23年前とは違いお互いが趣味として純粋に自転車を楽しむようになった今、これからどんな物語が生まれていくんでしょうね。
僕も大学時代の自転車仲間と一緒に走りたくなってしまいました。
なんか、とんでもなく強い選手だったように書いていただいておりますが、所詮、敗北して降りた元選手程度でしたよ(汗)
ほんま、まるで半年ぶりに会うような感じでしたよね!
先週、ご自宅に泊めていただいた時もなんの違和感も遠慮もありませんでした(笑)
あらためて、これからもよろしくお願いいたします。
あ、日曜日、お互い二日酔いでモーニングさんを一時間以上お待たせしたことも書いておかなくちゃいけません。
これまで自転車仲間には、よく話していました。
それだけ自分の自転車人生に影響のあった人なんでしょうね。
冨田君に再会出来た事で
これから始まる何かが楽しみです。
そして23年もの時間が経っていたなんて
とても思えないくらい、大学時代のままでした。
時空は、人によって違うのかもしれませんね。
はりまシーサイドロードと万葉岬は
再会の舞台として私達に花を添えてくれました。
自転車の楽しさを語れるようになった事は嬉しいです。
やはり、このタイミングだったのでしょう。
冨田君に遊んでもらうために
ちょっとは走れるように鍛えなきゃなと思いました。
絶対冨田には勝てなかったと思ってる元プロ選手多数でしょう。
未完のサラブレッドですよ。
大学時代の四畳半の下宿に遊びに来ていた時と同じでしたね。
二日酔いで二人揃って遅刻してしまいました。
モーニングさん、ごめんなさい。
そして冨田君、これからもよろしくお願いします。
素敵な再会の場にご一緒させていただき、僕も心がホカッとなりました。
また、冨田さんからの貴重なアドバイスは今後に活かしたいです。
本当にありがとうございました。

