そして、歯車は狂い始めた |
またまた前回からの続きです。
臨時漕会列車はレース序盤で3人列車になってしまいました。
レース経験の浅いタイプRさんを最後尾に固定して
私とフクちゃんが先頭を回します。
「先頭を回す」という言い方は語弊があるかもしれません。
「先頭で物色する」と言った方が近いでしょう。
もちろん、自分達が付くべき選手を物色するのです。
ペースが良ければ長く留まり
ペースが遅ければオーバーテイクする。
そしてペースが速ければ躊躇なく離脱して他を探す。
与えられた条件を瞬時に判断して前へ前へ・・・
すんなり背後に付ける時もあれば
そうでない時もあります。
我々が背後に付くのを察知すると
利用されるのを嫌がって逃げる選手が必ずいます。
コースを斜行までして逃げるのはナンセンス。
そんな事に脚を使うくらいなら我々を引き連れて誰かの後ろに付いた方がいい。
そうすれば自分が前後を挟まれる絶好のポジションを手に入れられるのですから・・・
ロードバイクは誰かの後ろに付くと
もちろん風の抵抗が減って体力を温存できますが
実は後ろに付いてもらっても空気の流れの影響で
単独で走っている時より出力は少なくて済むのです。
我々が背後に付いて逃げる選手がいれば深追いはしない。
そんな事に脚を使ってられないからです。
今回のレースでは下り基調のバックストレートが向かい風になります。
本来ならスピードアップしてタイムを稼ぐところですが
強烈な向かい風によって思うようにスピードが出ません。
それどころか頭を下げてエアロポジションをとらなければ押し戻されそうなぐらいです。
ここは、多少、我々とペースが違っても
とりあえず誰かの後ろに付いて向かい風を凌がなければなりません。
このバックストレートで体格が横に大きくて、
そこそこ速い選手の後ろに付けた時は、思わずフクちゃんと笑ってしまいました。
「コイツ、見かけによらず速いかも・・・」
バックストレートから下りの高速カーブも全然速度が衰えない。
体重が彼に味方して速い速い!
「コギコギさん、俺も結構、下り、速い方だけど
俺の上行くわ・・・」
「あの体格で、この速さ・・・
暫くお世話になりましょうか」
強力な風除けを手に入れた嬉しさでニコニコしながら
ドラフティングします。
しかし、1コーナーからホームストレートへ戻ってきた時
彼は無情にもピットロードへ・・・
そう、彼はソロではなくてチームの選手だったのです。
選手交代するためにピットへ帰っていきました。
いいペースの奴がいると思ったら
そいつはチームの奴でピットへ帰って行ってしまう事は良くあることです。
風除けが消えて意気消沈ですが、
ホームストレートは追い風が吹いています。
バックストレートで我々を苦しめた風は
ホームストレートで味方に転じます。
そしてもうひとつ、ホームストレートには強力な味方が待っていてくれました。
おばさん、ぽチャコさん、ブラックさん
そしてクライム君にワインレッドさん・・・
丸に臨の字のジャージを見つけては応援してくれました。
我々は苦しい場面でもホームストレートが来る度に力をもらいました。
応援の人々に手を上げて合図して
自分自身も奮い立たせます。
「出し切るぞ!」
しかし、応援は我々の背中を追い風以上に押してくれていました。
私とフクちゃんとタイプRさんで臨時漕会列車を形成して戦っている頃
臨時漕会のメンバーはそれぞれの戦いを繰り広げていました。
その中で唯一先頭集団に残っているのがhiroさんでした。
我々の後方からオートバイが近づいて
先頭集団がやってくる事を告げます。
台風がやってくる前に避難する様に
我々は先頭集団の進路を妨害しない様にコースを左寄りに変更しました。
「hiroさん、まだ先頭集団に残ってるかな?」
「さあ・・・残ってればいいけど」
フクちゃんと一言二言会話していた時です。
ゴォ~ッという音がしたかと思うと数えきれないほどのロードバイクの群れが
大きな風の塊りとなってやってきました。
何もかも飲み込んでしまうのではないかと思えるほどの
圧倒的な速さとパワーは無言のうちに周りを威圧していきます。
まさに選ばれし者の塊りでした。
そしてその塊の一角から声がしました。
「マイペース!マイペース!」
声の主は臨時漕会からたった一人
先頭集団で戦っているhiroさんでした。
彼は先頭集団に乗りながら我々の列車を見つけて声をかけてくれたのでした。
「オーッ!」
突然のことだったので
言葉にならず、ただ声を上げました。
まだhiroさんは先頭集団に残っている・・・
俺たちも頑張んなきゃな・・・
レースの前半は誰しも脚が残っていて順風満帆の様に見えます。
日常ではありえないサーキット走行。
そしてスピード感・・・
言わば幸福の時間帯と言えます。
しかし、その幸福感と引き換えに、きっちりと代償は支払わされているのです。
それは本人も気づいていないかもしれません。
幸福であればある程、その代償はレース後半にサラ金の金利の様に大きくなって
ライダー達に襲い掛かってくるのです。
我々臨時漕会も幸福の時間は終わりを告げようとしていました。
少しずつ、歯車が狂い始めてきます。
ヘアピンの登りから向かい風のバックストレートに入った時
私の後ろに付いていたフクちゃんが教えてくれました。
「タイプRさんがボトル落としたで・・・」
「マジ?」
幸い気温は低く、ドリンクの消費量は少なく抑えられていました。
走りながら私かフクちゃんのドリンクを回し飲みして凌ぐ対策が頭をよぎりました。
続けて後ろでフクちゃんの声がしました。
「それで、タイプRさん、ボトル拾いに行ったで」
「エエッ!
拾いに行ったぁああ?」
ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。
今日はここまでで止めておきます。
続きは後日、書きますね。
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執筆は大変!ですね! でも 次をお待ちしております^^;
もうちょっと引いてもらえば、今回のBest宿主賞だったのにね(^_^;)
ボトルを落とすというアクシデント、続きが気になるところですね(^^)d
エンデューロって案外落とし物がありますが、補給食なら諦めますけど、ボトルとかの場合どうすべきなんでしょうか?
昔のヨーロッパのロードレースでは
勝負どころが来ると故意にボトルを捨てる事はあったんです。
登りの前に重いボトルを捨ててライバルと勝負する・・・
ボトルを捨てるにはそれなりのリスクがありますが
それでも少しでも軽くしてライバルに勝つ!
そういう事知ってると
レース中にボトルを拾うという発想が無くなってしまうかも。
我慢して走って、それでもダメならピットインして予備ボトルを取る・・・
そういう発想になってしまいますね。
でも、実際は拾った方がいいのかもしれません。
レース終了後に拾いに行こうかと思ったのですが、終了してしまうともうコース上には入れなさそうだったので、後半の向かい風が強くてノロノロ走りの時に拾いました。タイムロスは僅かだったと思います。
関係ないですが、コースサイドにバイクを止めて写真を撮っている選手を何人か見ましたが、来年から禁止になるかもね。
冷静に走行しているつもりでも舞い上がっていたのかもしれません。
次の周で取りに行ったのではありません。
なぜ、その周でボトルを回収したかですが、ボトルがコース中央部で留まってしまったからです。後続の選手の落車に繋がったら危険ですからね。ですから次の周ではなくすぐに回収すべきだと思ったのです。
ではどうやって回収したかですが以下に箇条書きにします。
ランオフエリア(コース脇の空きスペース)をボトルの近くまで戻る。
ロードバイクを壁に立てかける。
選手が途切れるのを待ってボトルのところへランニングして回収。
といった具合です。
タイムロスは大きかったですが、自分のミスですし、こうするしかなかったかなと思っています。