この記事は8月20日(日)の出来事を書いたものです。
前回からの続きです。
「減速ぅ~!」
大きく御手洗(みたらい)と書いた看板が見えると
ワタルさんは減速のハンドサイン。
「右に入りまぁ~す!」
私たちは御手洗休憩所の前に停車しました。
「おおっ!ここ、バイクラックが置いてあるぜ」
私たちはロードバイクをバイクラックに掛けると作戦会議。
まずは休憩所で地図をもらいました。
「うわぁ・・・
御手洗は思ってた以上に規模がデカいわ。
ワタルさん、自転車で入れないの?」
「狭い路地ばかりですしね・・・
他の観光客も居ますから・・・
ここは歩いて行きましょう」
「しかし・・・
この規模は・・・
御手洗を見て回るだけで一日かかるね。
サイクリングのついでに
ちょっと立ち寄るというより
ちゃんと御手洗を観光するという目的を持って来なきゃ・・・
取りあえず、少しだけでも歩いてみましょう」
私たちはゆっくりと
御手洗の路地へ入っていきました。
すると、ほんの少しだけ足を踏み入れただけなのですが
明らかに非日常の別世界に来たのだという感覚に包まれました。
岡山県の牛窓を訪れた時は「昭和の世界にタイムスリップ」と表現しました。
しかし御手洗はそれ以上・・・
「戦前の世界にタイムスリップ」なのです。
私はタイムマシンから降り立った未来人のごとく
あたりを見回しながら歩を進めました。
「この町並みに丸臨ジャージは良く似合うね」
後ろでリキさんの声が聞こえます。
きっと写真を撮っているのでしょう。
街角の至る所に
歴史的建造物を説明するプレートが設置してありました。
それらを流し読みして
ほんの少し御手洗の歴史が分かりました。
「薩長同盟が成立した頃
長州軍と芸州軍との間で
討幕のための約定(御手洗条約)が
ここで結ばれたんだって・・・」
「島という閉ざされたシチュエーションが良かったのかな。
邪魔が入らないしね」
「へぇ~中村春吉という人が
日本で初めて自転車で世界一周したんだって。
1902年から1年半・・・」
「その頃で世界一周は凄い。
パンクとか、どうしたんだろう?」
「そもそもその頃ってクリンチャータイヤあったのかな?
ソリッド(総ゴム)タイプだったんじゃない?」
そんな話をしながら歩いていると
ひときわ立派な白壁の建物を見つけました。
「中に入れるみたい」
若胡屋(わかえびすや)と書かれた暖簾をくぐると
中は想像していたのと違って
だだっ広い空間が広がっていました。
「あっ、自転車!」
「中村春吉が世界一周に使った自転車のレプリカだな」
展示してあるというよりは
隅っこに片付けられているという感じ・・・
私は奥へ奥へ進んで中庭に出ました。
するとそこには何故か一つだけお墓?があったのです。
周囲の雰囲気に何か胸騒ぎの様なものを感じた私は
すぐさまみんなの下へ駆け戻りました。
「向こうは行かない方がいいかも。
なんか妙な・・・感じ・・・」
「コギコギさん
その感覚、間違ってないかもですよ」
ちょうどバスク輪さんが壁に展示された説明文を読んでいました。
「おはぐろ事件っていう殺人事件があったみたいです。
花魁(おいらん)が彼女たちの世話をする禿(かむろ)と呼ばれる少女を
おはぐろが原因で殺してしまったみたいですね」
私もその経緯を書いた説明文を読みました。
なるほどそこには
恐ろしくも悲しいストーリーが書かれてありました。
遊郭としては西日本一といわれるほどの規模を誇った若胡屋(わかえびすや)の存在は
この瀬戸内の小さな島が如何に繁栄していたかを物語っています。
しかし、その繁栄の影に
貧困の中、家族を助けるため
自らを犠牲にしなければならなかった遊女たちがいたのです。
今となっては遠い昔の話かもしれませんが
中庭にたった一つ残る花魁(おいらん)の墓と
禿(かむろ)が死に際して付けた壁に残る血痕の手形は
彼女たちの深い悲しみを生々しく今に伝えるものだと感じました。
ふと外を見ると
若胡屋(わかえびすや)の暖簾の向こうが明るい。
そして観光を楽しむ若い女性が通り過ぎていくのが見えました。
「さっ、そろそろ帰ろうか」
御手洗は、その規模からして
ほんの少ししか見ることが出来ませんでした。
私たちは後ろ髪を引かれる思いで御手洗を後にします。
あとは島の南側の海岸線を
行きと同じ橋で繋いで県民の浜へ向かいます。
途中、私たちは何度も立ち止まって海を見ました。
この日、島の下半分が水蒸気に白く霞んで見えました。
その島々を背景に船が進みます。
リキさんは、この風景を写真に収めようとシャッターを切りました。
「あっ、またあの船!」
白い幌の屋根に白い帆を掲げた小さな船が
まるで過ぎゆく夏を惜しむかの様に
音も無く静かに漂っていました。
私にとって
これが
とびしま海道の景色なのです。
旅とは日常から解き放たれて
非日常の世界に遊ぶことだと考えています。
そうであるなら、とびしま海道の島々は
私たちにとって海に隔てられた別世界、
いわば非日常です。
その非日常が橋によって連鎖する。
旅が橋によって連鎖するのが
海道と呼ばれる道なのだと思います。
自転車で島はしご・・・
なんて楽しい遊びなんでしょう!
走行距離…72.55km
時間…03:42:09
平均速度…19.59km/h
最高速度…52.59km/h
平均CAD…69
積算距離…4257km
消費㌍…1351kcal
補給食…###kcal
心拍…Ave.130Max.150
ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。
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