階段を1段か2段、とばして駆け上がるのをイメージ |
前回からの続きです。
「ハンドルを引くって話をしておいて何なんだけど
ちょっと、その話は置いといて
ハンドルを押す話から始めようかな・・・」
「ハンドルを押す?」
「そう、高速巡行する時にハンドルは押す感じになる。
と言うか・・・
最初、レンちゃんは腕をつっかえ棒にして
ハンドルにもたれ掛かっていたでしょ。
そうじゃなくて、ハンドルを押す感じなんだよね」
私は部屋の壁を両手で押す動作をしながら話を続けました。
「こうやって壁を押すだけでも
背筋がピンと伸びる事は無いよね。
押そうとすれば背中は少し丸くなる。
もたれ掛からない限り、そうなるよね。
やっぱり、背中が丸くなると上半身の筋肉が覚醒して臨戦態勢、
体幹の筋肉も使いやすくなる。
これが高速巡行時の上半身の感覚なんだよね」
「・・・・・」
「ちょっとイメージしにくいかもしれないね。
じゃあ、日常生活で言うと
スーパーのカートを押す感じかな。
カートには少し重い物を入れよう。
10kgのコメを入れようかな。
そのカートをタッタカ、タッタカ、いいペースで押して進む感じ
重いから前傾姿勢になって
背中は少し丸くなる・・・
こんな感じかな、高速巡行って・・・」
レンちゃんはローラー台の上でペダリングを始めました。
「押す感じ・・・
こんな感じなのかな?」
「実はペダリングも
ママチャリとロードバイクでは全然違うんだよ。
ママチャリはね
主に膝関節を曲げたり伸ばしたりする運動でペダルを漕いでる。
言い換えれば、地面を踏みつけるような運動の連続と言える。
使う筋肉は太ももの前側の筋肉ね(大腿四頭筋)
対してロードバイクは太ももの上げ下げをすることでペダルを漕いでる。
言い換えれば股関節の運動の連続。
分かる?ママチャリは膝関節、ロードバイクは股関節の運動なんだな」
「へぇ~同じように漕いでいるように見えるのに・・・」
「さあここからが重要!
股関節を動かす、つまり太ももの上下運動に
どんな筋肉を使うか?
レンちゃんは腸腰筋って聞いた事ある?」
「ちょうようきん?
聞いたことないです」
「腸腰筋っていうのはね、背骨のみぞおちくらいから
お腹の中を通って大腿骨の根元に付いている筋肉群のこと。
表からは見えないからインナーマッスルと言ったり
人間が運動するうえで基盤になる重要な筋肉だから体幹の筋肉と言ったりする」
「大腿骨の根元に付いているから
収縮すると大腿骨を引き上げる、つまり太ももを引き上げるんだね」
「へぇ~腸腰筋で太ももを引き上げるんですか」
「じゃあ、今度は太ももを引き下げるにはどの筋肉を使うか?」
「どの筋肉を使うんですか?」
「太ももの裏側にあるハムストリングスという筋肉群を収縮させて
太ももを引き下げる。
ハムストリングスは、みんなハムって言うよ。
ハム使えとか言う」
レンちゃんは小首をかしげながらローラー台を回します。
「腸腰筋で太ももを引き上げて
ハムストリングスで太ももを引き下げるっていうけど
その辺の筋肉、全然使えてる気がしないです」
「腸腰筋もハムストリングスも普通は意識しにくい筋肉だからね」
「じゃあ、どうしたらいいですか?」
「まず、フォームが大事。
レンちゃんがやってた背筋が伸びてハンドルにもたれ掛かるようなフォームだと
腸腰筋が使えない」
もたれ掛かるようなフォームでは
大腿骨とみぞおちとの距離が近くなる。
という事は腸腰筋が収縮しても大腿骨、つまり太ももを引き上げる力になりにくい」
みぞおちと大腿骨との距離が遠くなるから
腸腰筋が収縮するとしっかり大腿骨を引き上げる力となる。
腸腰筋をしっかり働かせるためにも
骨盤を立てたフォームっていうのは重要なんだね」
「なるほど・・・」
「こういうフォームが出来るようになって
さあ、どうやって腸腰筋とハムを動かせばいいか?」
「ええぇ~どうやって動かすんですかぁ~?」
「普通は筋肉が動いていることをイメージして反復練習するんだろうな。
病院のリハビリと同じ。
次第に動くようになる。
ただし、私は少し違うやり方がいいと思ってる」
「どんなやり方ですか?」
「階段を1段か2段、とばして駆け上がるのをイメージしながらペダリングしてる」
「ええっ?階段をとばして駆け上がる?」
「そう、実は日常生活で
人間が階段をとばして駆け上がる時
しぜぇ~んと腸腰筋とハム使ってるのよ。
じゃあ、そのイメージでペダリングすればいいじゃん!
ってことで階段を1段か2段とばして駆け上がるイメージペダリングしてる」
「目の前に階段があって、
それを1段か2段とばして駆け上がる・・・
そうすると、自然と膝を高く上げようとするでしょ」
レンちゃんはローラー台を階段とばしのイメージで回します。
「そうそう、めっちゃカッコいい!
今までと全然違う!」
「ペダリングをイメージするのに
ある人は膝を顎に打ち付ける様にって表現してた。
また、ある人は膝を高い位置に保つようにって表現してた。
そして私は目の前に階段があって、
それを1段か2段、とばして駆け上がる様にって表現する。
私は素人なんでエラそうな事言えませんが
同じことを表現してるのかなと思う」
「ハムは何となく動いてる感じがします。
でも腸腰筋の方は・・・」
「そりゃ、腸腰筋が動いているのを感じるのは難しいよ。
でもね、グッとお腹に力を入れる感じにすると脚がよく回る。
グッとお腹に力を入れる感じだよぉ~」
ローラー台を回すレンちゃんのフォームは
初心者とは思えない感じになってきました。
「じゃあここで、いよいよハンドルを引く話をしようね。
さっき、脇を締めるって言ったよね。
手の平を上にしてブラケットの上にもってくる。
この時、肘の関節のくぼんだ方が上になる。
手の平だけをくるっと回してブラケットを握れば
自然と脇が締まって腕にも余裕が出来る」
「レンちゃん、何で脇を締めるか分かる?」
「う~ん・・・」
「それじゃあ、ここで、ちょっとした実験をしよう。
レンちゃん、上ハン握ってみて」
(ここで言う上ハンとはハンドルのフラットな部分、ブラケットではありません)
「まずは普通に親指を使ってしっかり握る」
「こうですか?」
「そう」
「じゃあ次は親指を上にしてハンドルを引っ掛ける様にして」
「こうですか?」
「そう」
「普通に親指を使ってしっかり握ると
親指をパイプの下にもって来なきゃならないんで、ほんの少し脇が開く。
対して親指をパイプの上にすると脇が開かない。
レンちゃん、背中の筋肉の感じ方、なんか違わない?」
「何となく、違うかな」
「じゃあローラー台の負荷を上げてみるね。
二つの握り方の違いが分かると思うよ」
「あっ!分かった!
親指を上にして握ったほうが背中の筋肉がよく動きます!」
「負荷が重い方がよく分かるね。
レンちゃん、今、背中の筋肉を使ってハンドルを引いてるんだよ」
「分かります!分かります!」
「踏み込んだ反力をハンドルを引く事でしっかり推進力に変える・・・
ハンドルにもたれ掛かっていては決して出来ない漕ぎ方だよね」
「ハンドルを引くっていうのがよく分かりました」
「今、レンちゃんは広背筋という背中の筋肉も使って漕いでる。
脇を締めろっていうのは広背筋を使いやすくなるからなんだなって分かったでしょ。
ハンドルを背中の筋肉を使って引く・・・
例えば、今、レンちゃんのロードバイクは初心者ポジションだから
ハンドルは一番高い状態で付いてるけど
もう既に、もう少し低い方がいいかもって思ったりするかもだよ」
「もしかしたら低い方がいいかもぉ~」
「だ・か・ら!
ハンドルは引きやすい所にセッティングするのがいいよね。
見た目にこだわって、低く、遠くにセッティングしたい気持ちは分かるんだけど
ちゃんと引けないと、意味が無い。
ハンドルが遠すぎたり、低すぎればハンドルを引きにくい。
逆に近すぎたり、高過ぎてもハンドルは引きにくい」
「そうですね、分かります」
「そして、もう一つのハンドルの役割である
ロードバイクをコントロールするにしても
例えば遠すぎるハンドルは下りでは頭から突っ込むみたいになって怖いよね。
ちゃんとロードバイクをコントロール出来る事
そして、ちゃんとハンドルを引けることが大事」
レンちゃんは最初、殆ど太ももの前側の筋肉だけを使ってペダリングしていました。
もちろん、この大腿四頭筋もペダリングには使うのですが
パワーがあって使いやすいけど持久力が無い。
今、レンちゃんは、腸腰筋、ハムストリングス、そして広背筋と
殆ど全身運動でペダリングしようとしています。
ロードバイクは全身の筋肉を使って漕ぐっていう理屈が分かっただけで
相当な進歩だと思います。
「さてと・・・
レンちゃん、今から外で実走しようか・・・
取りあえず、80kmくらい走ってみるか!」
昨日、コケまくってた初心者が
今日、80kmも走れるのか?
ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。
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