10か月ぶりの恩返し |
前回からの続きです。
レースが始まって1時間30分を数分経過した時です。
私の後ろから声がしました。
「コギコギさん!
ボトル、持って来ました」
「マジか!
よく、見つけられたな!」
レース開始後、2時間以内に持って来いという課題を見事にクリアです。
しかし、この暗闇のサーキットで
どこを走っているかさえ分らない私を
一体どうやって見つけたのでしょうか?
「コギコギさん、丸臨ジャージの威力ですよ・・・
すぐに分りました」
レース後、住友輪業さんに聞いたところ
マスターから計測バンドを受け取ってスタートした時は
本当に私が何処に居るのか見当もつかない状態だったそうです。
きっと出会えるはずだと信じて全速で走り続けたと言います。
確かに、この丸臨ジャージには不思議な力が備わっているのかもしれません。
スタートしてから一旦、離れたkonoさんを見つけられた事・・・
マスターが私を見つけて声を掛けてきた事・・・
そして、住友輪業さんがボトルを持ってきた事・・・
過去にもレース中にメンバーと言葉を交わす事は何度もありました。
考えれば、どれも、なぜ見つけられたのか
うまく説明が出来ません。
現に、タイプRさんがショップのチームジャージを着てエンデューロに出場した時は
すぐそばに居ても、全く気付きませんでした。
また、臨時漕会にチームジャージが無かった頃
フクちゃんと臨時漕会と書いたオレンジ色の腕章をして出場した事もありましたが
最初の周回の混乱ではぐれて以降
ゴールするまで会えなかった事もあります。
手前みそですが、臨時漕会ジャージは
どういうわけか見つけやすいのです。
私と住友輪業さんは
バックストレートで並走しながら言葉を交わしました。
「ボトル、ありがとう!助かったよ」
「コギコギさん、いいペースで走ってますね」
「いや、もうそろそろヤバいよ」
「後ろ、乗っていきますか?」
「無理!無理!」
「じゃあ!」
そう言うと住友輪業さんは深い前傾姿勢を取って加速して行きました。
住友輪業さんが満タンのボトルを一本持ってきてくれたお陰で
ボトルゲージには満タンのボトルと半分のボトルが入った状態になりました。
当初の作戦では2時間でピットインして
2本のボトル全てを満タンのものと交換する予定でした。
1時間に1本のボトルを消費する計算なので
これで少なくともあと1時間半はピットインせずに走り続ける事が出来ます。
ドリンクの消費量が計算を下回れば
このままピットインせずに走り切る可能性も出て来ました。
あとは・・・私の筋肉が、
これまでのオーバーペースで発生した乳酸をどこまで代謝出来ているかです。
ボトルを受け取ってから30分は
集団に乗れず空気抵抗を一人で引き受けながらも
ラップタイムはなんとか6分台後半を維持していました。
その間の平均心拍は165・・・
去年のミッドナイトエンデューロに比べて12拍
春のエンデューロに比べても9拍高い・・・
乳酸の蓄積は雪だるま式に増えていくようでした。
体が重くなっていく感覚から
明らかに「しんどい」と感じる様になりました。
「ヤバいな・・・
レースは、あと2時間も残っているというのに・・・
一旦ペースを落として乳酸を抜くべきか?」
レース中、ペースを落とすというのは勇気のいる事です。
だいたいはペースを落とす事が怖くて力付きてしまう。
そうでなくても一旦ペースを落としてしまえば
二度とペースを上げられないかもしれません。
不意に後ろをチラ見しました。
すると何人かが私の後ろに付いている。
「俺が引いているのかよ!」
こうなるとペースを落とせません。
後ろについている奴らに
「あいつ、失速しやがった」と思われたくありません。
せめて、私が誰かの後ろに付くまではペースを落としたくありません。
そういう時に限って、なかなか風除けは現れないものなのです。
そんな時、私の右横を並走するロードバイクが現れました。
「コギコギさぁ~ん!
ま、前に出れなぁ~い!」
「のぶ吉さん!後ろに居たんすか!
その気持ちだけでいいです!
ありがとう!」
いつもサーキットのコース上で出会うのぶ吉さんが
私の前に出て前を引いてくれようとしてたのです。
しかし、今年のミッドナイトエンデューロは
いつものレースに比べて確かに速い!
それは私の高い心拍から明らかでした。
平均心拍は160以上をキープしたままです。
引き続き、私が先頭のまま列車を引きます。
しかし、辛い・・・
やがてラップタイムが7分台前半まで落ちる。
私は何回も後ろをチラ見しました。
後ろには眩しく光るヘッドライトがいくつか見えました。
「誰か・・・前を引く奴は居ないか・・・」
その時、私は目を疑うような光景を目の当たりにしたのです。
後ろから一人の選手がスルスルと私の前に出たかと思うと
ハンドサインで「君の前へ出るよ」と合図して
私の前に入って列車を引き始めたのです。
もちろん私は先頭交代の合図は出していません。
ロードレースならいざ知らず
エンデューロレースでは先頭交代の合図を出したところで
後続が前を引くのを嫌がって
そのまま列車消滅なんて日常茶飯事だったからです。
先頭交代よりも、自分が後ろに付く人を物色し続けるのが常でした。
ところが彼は自ら志願して先頭を引いたのです。
彼の後ろに付く事で私は一時的に空気抵抗から解放されました。
すっとペダルが軽くなる。
「ありがたい!
このタイミングで休めるなんて・・・」
約2周、彼の後ろに付く事で
ラップタイムを6分台後半で維持したまま休む事が出来ました。
「この人、誰?」
彼が先頭交代のハンドサインを出して
私の横を下がっていく時、彼の正体が判明しました。
「コギコギさん・・・
脚が攣って・・・
もう、ダメっす・・・」
「うわっ!CAAD10君だったのか!」
そうです。
レースが始まる前、
私がロードバイクをピットへ搬入しようとした時
パドックで声を掛けてくれた若者でした。
秋のレースで私の後ろに付かせてもらったのだと・・・
彼は身を挺して私を空気抵抗から守ってくれたのです。
10か月ぶりの恩返し・・・
私はサーキットの暗闇に向けて大声を上げました。
「ありがとぉおおお!」
ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。
今日は、ここまで書いて力尽きました。
続きは後日、書くつもりです。
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最後のCAA10さんの恩返しにちょっと感動しちゃいました^_^
エンデューロってそういうのあるから楽しいですね!
続きも楽しみにしてます!
丸臨が背中にシンプルに大きく描かれていること、黒の地色に白文字という見やすさがポイントではないでしょうか?いろいろなチームジャージを見ても一文字がこんなに大きいものは珍しいと思います。そして被視認性を重視している列車の行先表示なども黒地に白文字が多いですよね。
文字の大きさを含むデザイン、色共に最高に見やすいんでしょうね。
ショップのジャージで走った時は妻やぴよぴよさんもなかなか見つけられなかったと言っておりました。ちなみにコギコギさんはこちらからはよく見えていました。視界の隅にいてもすぐに気づけますね。奇跡のデザインと言っても過言ではないでしょう。ショップのジャージも近くで見れば決して地味ではないし、けっこう特徴もあるんですけどね。
チームメイトの気持ちは勿論!見ず知らずの若者の気持ち…嬉しいですね☆ 自転車乗りって いいなぁ♪(*^^)o∀*∀o(^^*)♪
背中の丸臨が目立つ以外にも、この1年ほど一緒に走らせてもらっているうちに、コギコギさんのフォームとかを無意識に記憶していたのかもしれませんね。
あのサーキットの中に様々な人間模様があるのです。
もの凄く褒めて頂いてありがとうございます。
確かに、背中の丸に臨の字は
男心をくすぐるんですよね。
妙に仲間意識が湧いて来るし闘争本能も掻き立てる・・・
臨時漕会のメンバーは最近誇りを持って袖を通している様に思えます。
いいチームジャージだと
心から思えます。
「飽きてきそう」だからと敬遠される人が居ます。
でも、サーキットの中を走っているのは人間です。
刻一刻と体はダメージを受けていきます。
それでも多くの人が
ひたむきに前へ、前へと走る事で
多くの感動とドラマが生まれるのです。
サーキットは単なる舞台であって
そこで演じられる人間模様に飽きる事等無いんですよね。
乗り換えるのが常套手段 他人と協力がない のが当たり前な雰囲気のエンデューロで チーム外からの援護射撃(^-^)v
さらに住友輪業さんからの援護射撃(^_^)
ツールドフランスの一部分を切り取ってみてるみたいや♪
楽しそうだなー(^o^)
エンデューロレースでもきっと生かせるでしょう。
臨時漕会のレースの原点は
エンデューロレースと言っても過言ではありません。
もし良ければ、またサーキットに戻って来て下さい。
ロードバイクへのモチベーションがアップしましたね。
もっと速く走りたい・・・
言い換えれば、もっと自分を高めたいと思う気持ちが
多分、人生を豊かにするのでしょう。
お互い自転車という趣味を持つ事が出来て本当に良かったですね。