余分なものは脱ぎ捨ててサドルに乗るから自由なんです。 |
またまた前回からの続きです。
明延鉱山探検坑道の入り口で
一般の人達との距離感の違いを散々見せつけて
私達は冨土野峠を上り始めました。
日本海側から上る冨土野峠の方が
瀬戸内海側から上るより勾配が急です。
私もそうですが
ノンチは割とダンシングを使うタイプです。
「さっきの芸術家のカップル・・・峠、上って来るかな?」
私達は芸術家のカップルが
冨土野峠の先に何があるか確かめに車で上って来るのではないかと
半ば期待しながら上りました。
自転車で、この坂を上っているところを見たら
また、驚いてくれそうな気がして・・・
「あっ!後ろからエンジン音がする!
さっきのカップルかな?」
後ろからエンジン音が近づいて来る度に
カッコよく見える様にダンシングに力が入りました。
「この峠は頂上が近いかなと思ったところから割と上るんよね」
結局、さっきの芸術家カップルが来ないまま頂上のトンネルに来てしまいました。
暇な日曜日、引っ越してきたばかりの探検ドライブで
探検坑道から吹き出る冷風と
自転車で200キロ以上走る私達と出会って
それだけで充分、面白かったのかもしれませんね。
私達は冨土野峠を越えて播州に戻りました。
長い長い下り基調の道が続きます。
県道6号線が安積橋で国道29号線に合流すると
いよいよ揖保川沿いを南下します。
毎度のことながら、この辺で一番お腹が空きます。
「ノンチ!道の駅で補給しようか!」
道の駅播磨いちのみやには揚げたてのコロッケやソフトクリームを売っています。
近くにコンビニもあるのですがコンビニはどこも同じなので
道の駅があれば道の駅に入る率は高いです。
私はソフトクリームを頂きました。
ノンチが話しかけて来ました。
「コギコギちゃん、今年のミッドナイトエンデューロはどうするの?」
「4時間、ソロで出るつもり・・・」
「俺は去年と同じ10時間ソロでエントリーした」
「10時間って凄いな」
「いやいや凄くは無いんだけど・・・
去年、前半は6分台や7分で走れたんだけど
交換は8分とか、時には10分とか
もの凄くタイムが落ちちゃうんだよね・・・」
「ノンチ、それって前半のペースが10時間を走るには
オーバーペースだったって事かもしれないよ。
エンデューロは最も速いマイペースで如何に走るか・・・だと思う。
結局、マイペースで走り切れた時が
無理して飛ばした時よりも
結果、速く走れる」
「最も速いマイペースねぇ・・・」
「ノンチね、心拍計導入したら?
みんなガンガン走ってるレースで
雰囲気に呑まれず
感覚だけで最も速いマイペースで走るのは難しい。
だから心拍計の助けを借りるんだよ」
「心拍計か・・・今一つ、よく分らないな・・・」
「まあ、車のタコメータみたいなものかな・・・
レッドゾーンとかあるじゃない。
心拍計はAT値を越えると無酸素運動領域
AT値以下は有酸素運動領域・・・
AT値以下で走り続ければ理論的に乳酸を溜めずに走れる。
ただレースだから乳酸を溜めてでも
最も速く走らなければならないでしょ。
車で言えばレッドーゾーンを越える場面があったとしても
結果的に最速で走れればいい。
ただ単にアクセルべた踏みでレッドゾーンを越えて走っていれば
短時間は速くても最後にはエンジンが壊れて失速する。
それと同じで100m走みたいなペースでエンデューロは走れない。
どのくらいの塩梅で走るか・・・
絶妙のペース配分を見出すのに心拍計はもの凄い威力を発揮する」
「そうなのかなぁ・・・」
「俺はね、ずっと心拍計使ってるから
逆に、心拍計無しで、どうやって最速マイペース見出すんすか?って感じ・・・
今日みたいに複数で走る時も
お互いの心拍を見て
ペースを合わせやすいしね。
トレーニングをするにしても心拍やパワー等
客観的な数値を見てトレーニングする事になる。
数値があったほうが分かりやすいし目標も立てやすいからね。
まずは心拍計導入してみれば?
強力な武器になると思うよ」
「よし、俺も心拍計、導入してみようかな」
「ノンチね、心拍計使いだすと
心拍計忘れた時、携帯忘れたくらい落ち着かなくなるよ」
ノンチが心拍計を使ってみると言って話しは終わりました。
私達は再び国道29号線を揖保川沿いに南下します。
速さを比べればノンチの方が速いのですが
エンデューロレースの戦い方は私の方がよく解って得いるつもりです。
自分の持てる力を最大限引き出す方法は
遅くたって同じだと思う・・・
もちろん高い身体能力が無ければなりません。
そのためにトレーニングが必要です。
走力の95%以上は身体能力と言えるかもしれません。
しかし、あとの5%はテクニックなんですよね。
ペダリングだったりフォームだったり
ドラフティングだったり・・・
そしてペース配分だったり駆け引きだったり・・・
あとの5%って結構大きいんですよ。
ハッキリと疲れたと言えばいいのに・・・
「あっ!とばしたらアカンで!とばしたら・・・」
ペース合わせてねって言えばいいのに・・・
すっかり日が傾いて
播州小麦が陽の光に照らされて金色に輝いていました。
ノンチの背中が私を風から守ってくれている様に思えました。
リーダーシップを執っているようで
辛くなれば助けてもらった。
30年ぶりに再会しても人間関係は同じでした。
不思議な事に一日中ノンチと一緒に過ごしましたが
どんな仕事をしているだとか
どんな暮らしをしているだとか
社会的地位や収入はどうなのかなんて一切話しませんでした。
話さなかったというより話す必要が無かったのです。
サドルの上は一人きりです。
自分以外、職業も地位も収入も何も乗せられない。
サドルには余分なものを脱ぎ捨てた裸のままの自分しか居ない。
だからこそ、一緒に走ると楽しいのです。
お互い、どれくらい走れるのかさえ分れば
何も知らなくても何の問題も無いのです。
サドルの上は一人きりです。
責任はありますが自由!
余分なものを脱ぎ捨てた解放感・・・
だからこそ心と心が触れ合う事が出来る。
まるで子供同士みたいに・・・
「ノンチ!そろそろお別れだね。
俺は2号線を西へ行く」
「コギコギちゃん、俺は2号線を東へ行くわ」
「じゃあ、今日はこれでバイバイか・・・」
思えば近所の悪ガキどもが集まって日が暮れるまで遊んだものです。
そう言えば、ノンチの自転車には派手なウインカーがついていたっけ・・・
「コギコギちゃん!またね!」
その別れ方が、あの頃のまま・・・
走行距離…211.90km
時間…8:37:54
平均速度…24.54km
最高速度…60.04km
平均CAD…83
積算距離…34287km
消費㌍…4776kcal
補給食…###kcal
心拍…Avg.139 Max.###
ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。
自転車乗りって、職業や地位や収入に関係なく
そんな事、全然知らなくても楽しく遊べてしまうんですよねぇ~
余分なものを乗せられない清々しさが魅力です。
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( ̄ー ̄)
小学生ながらに非常に憧れでしたね!
自転車は童心に帰らせてくれるタイムマシーンですね( 〃▽〃)
ブログのほう、あの時のことが、どのように書かれていくのか毎回ドキドキしながら見てました。
コギコギさんは私を抑えようとしていたようですが、私はコギコギさんに「ノンチまだまだなや」と思われないように無理してガンガン漕いでたんですよね~~~まだまだ自転車に乗りはじめて2年の未熟者です。
あれから即、ハートレートセンサーを購入したので、これからはデータも参考にしながらステップアップして行こうと思っています。
今月末のエンデューロ10時間では、アベ30km/h超えを大きな目標として、昨年の自分(27.52km/h)を超えられるように頑張りたいと思います。
では、次はエンデューロの会場でお会いしましょう!また連絡します!
ゴルフを通じて上司やお客様をもてなしながら接待サイクリングをするそうです。
僕も日本のロードバイク文化の発展を願う人間のひとりですが、サドルの上ではみんな対等な関係でいたいものです。
ロードバイクが「第二のゴルフ」になりませんように!
何人かいるとは思いますが
よりによって月に1200km走ってるなんてねぇ~
それだけ乗ってる奴っていうのは一握りですよ。
だいたい30年ぶりに再会した同級生と
200kmオーバーサイクリングが出来るなんて凄い確率です。
70~80kmなら他にも居るかなぁ~って感じですけど・・・
次のミッドナイトエンデューロで
去年の自分に勝てるといいですね。
応援してます。
それと、また一緒に走りましょう!