棚田の向こうに空と、遠くの山の稜線が見える |
前回からの続きです。
まだ県道を進んだところにあります。
冬場は特に車の離合が難しいのでヒルクライムチャレンジシリーズの登り口は下山専用
写真の登り口の方を登り専用で使っていたと思います。
私が仕事で通っていた時は、こちらの登り口から登っていたので
何も考えずに走っていたら、こちらの登り口の方に来てしまいました。
「ハチ高原・旅館街9.1kmか・・・」
私の実力だと、小一時間かかってしまいます。
少なくとも、小一時間は自動的に追い込み練となります。
案内板を見て心が少しだけ途方にくれました。
登り口に足を踏み入れ登り始めます。
最近、ダンシングについて良く聞かれるので
ダンシングを多めにして登ってみようと考えていました。
最初のうちは勾配が緩いので
ダンシングをするといつの間にか休むダンシングになってしまい
心拍が下がってサボりながら登れました。
実はこの道は村岡へ抜ける大野峠なのです。
スキー渋滞などで国道9号線が渋滞した時
村岡から但馬トンネルを通らずに関宮まで戻って来れるエスケープルートです。
村岡から続く長い長いスキー渋滞を避けて
この峠を車で走った事を思い出していました。
だから私の大野峠の記憶は路肩に除雪した雪が積んであるような冬景色なんですね。
白い冬の記憶が残る大野峠を
夏の緑の中で登坂していました。
しかも車とは比べ物にならないくらいゆっくりと・・・
記憶との落差に少し違和感を覚えながら確かめるように登ります。
やがて葛畑(かずらはた)という集落が現れて来ます。
すると「ハチ高原6km・ハイパーボウル東ハチ3km」という看板が見えるので
そこを左折します。
それまで平均勾配が3.7%だったのに対し
ここからハチ高原までの6kmは平均勾配が約7%と倍増します。
一気にペダルが重くなり休むダンシングをしても心拍が上がる。
いや、ここからは休むダンシングなんて無いのかもしれません。
勾配が強制的に追い込み練の心拍まで追い込んでくれるのです。
勾配が急になり、心拍が上昇すると体温の上昇を感じました。
登りの速度では風による空冷効果は望めません。
サイクルコンピューターの示す速度は常時一ケタ・・・
ハチ高原を登っている事を少し後悔しました。
しかし、私にはハチ高原を登る理由がある。
「棚田の向こうに空と、遠くの山の稜線が見える」
あの景色を見るために登っているのです。
葛畑からの6kmのいやらしいところは
平均勾配が約7%といっても、途中、平坦路が現れるところかもしれません。
比叡山の様に一定の勾配が淡々と続く方が登坂のリズムを掴みやすい。
ペダリングにしても呼吸にしてもダンシングにしても
一定のリズムで淡々と登れる方が精神的にも安定して登れるのです。
ところがこのコースは、平坦路が現れてスピードに乗ったと思ったら
また急勾配が現れてシフトチェンジをする。
登坂のリズムが掴みにくい上に
いったん楽をした後に苦しむということが繰り返されます。
人を喜ばせておいて
そのあと苦しめるような人は大抵性格が悪い人ですよね。
まあ・・・ヒルクライムレースに出る様なMな人は
そういういやらしいのがお好きなのかもしれませんが・・・
ゴールまでの間に東ハチ(スキー場)があるというのもいやらしいかもしれません。
何となく、スキー場があるとゴールみたいに思えちゃうじゃないですか。
でも、ハチ高原は、まだ登らなくてはいけないんです。
「歓迎!東鉢伏高原」の看板が
まだゴールは先なのにゴールは近いと言っているみたいでいやらしい・・・
この看板を見て喜んだらダメなんです。
喜んだら、ぬか喜びですから・・・
登り始めてここまで、誰ひとり人に出会わなかったのですが
ダンシングで登っていると
ペンションのオーナー夫人と思われる女性が農作業の手を止めて
こっちを見ていました。
「こんにちは!」
見ず知らずの私に笑顔で挨拶をくれました。
「こんにちは!」
私もすかさず挨拶を返します。
このやり取りで少し元気になった。
たった一人きりで
ハチ高原を自転車で登っていた私にとって
この女性の「こんにちは」は「がんばって」に等しかったのです。
この女性の前を通り過ぎる時だけは
少なくともカッコよく?ダンシングで登ったつもりです。
東ハチのスキー場を過ぎて夏合宿で使うようなグラウンドが山の中にあります。
ここもいったん勾配が緩やかになるようないやらしいところなんですが
そこを過ぎると山の木々がパッと途切れるところがあるんです。
山の木々が途切れて空が視界に入ってくる・・・
実はこの視界の開けたところこそ
私がハチ高原を登る理由だったのです。
私が見たかった景色はハチ高原の頂上では無く途中に存在していたのでした。
「棚田の向こうに空と、遠くの山の稜線が見える」
その景色は10年以上前の、あの日と何も変わらぬかの様にたたずんでいました。
私はロードバイクを静かに減速させました。
やっと辿り着いたか・・・
ここは道路の山側にちょっとした小屋があり
その横に湧き水をホースで引っ張ってきた粗末な水汲み場があるんです。
あの水はあの日と同じ味だろうか?
水圧に手が下に押し下げられながら
手に当たったしぶきが脚を濡らしました。
「うわっ!冷てぇ~!」
トリガタワのひびのきの水よりも明らかに冷たい。
さすがに標高が高いだけの事はあります。
両手で水をすくって飲んでみる・・・
「うまっ!」
ひびのきの水の柔らかさに比べるとキレのある味わい・・・
私は水の冷たさと戯れるように顔を洗い頭から水をかぶりました。
ヒルクライムによって熱くなった体が
気持ち良く冷やされていきます。
まるで禊(みそぎ)を済ませたかの様に清々しい気持ちになりました。
今日は一人だからゆっくりと見よう・・・
私はロードバイクを立て掛けたまま景色の方向へ歩いて行きました。
あの日と何も変わらぬ景色は
あの日と同じ様に私の心癒していくのが分かります。
「ピーヒョロロロロ…」
トンビの声が近くに聞こえた。
これが「棚田の向こうに空と、遠くの山の稜線が見える」景色。
この景色が私がハチ高原を登る理由だったのです。
ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。
とりあえず、見たかった景色には出会えました。
しかし、ハチ高原の頂上までは道半ば・・・
そして帰り道にはハチ高原に匹敵する様な大きな峠が待っています。
今日はここまでしか書けませんでした。
続きは後日書くつもりです。
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スキーシーズン以外はなかなか行く機会はないですが、今回のブログで行きたいと思いました!
日本にはすてきな道がたくさんありますね。
景色を楽しむどころじゃないと思いますので
棚田なんて見てられなかったと思います。
この場所、平坦ですから
踏んで踏んで加速しなきゃならないところですし・・・
スキーシーズンならハチ北とかハチ高原行くのかな?
オフトレで一緒に滑るのもいいかも。
何の変哲もない田舎の景色に感動するんです。
アメリカ在住の年配の日本人が集まるところで
「うさぎ追いしかの山~」と涙しながら歌うそうです。
福島の原発事故で避難している人達も
涙を流しながら歌っていましたね。
こういうのどかな景色を見ていると
日本人の精神が帰るところなのかなぁ~と思います。
頑張った後の 素晴らしい景色! 自転車で経験するまでは全く想像がつきませんでした。 苦しい思いをして ご褒美が景色だけ?
何が 楽しいの?って…f^_^;)
ヒーヒー言って登って …やったぁ!!!と眺めた景色…何であんなに素晴らしいのか?…自分でも未だに分かりませんf^_^;)
でも、何故か また見たくなるんですよね。車で上がった景色と同じなのにね(^_−)−☆
車で登って見る景色よりも素晴らしく難じるのは何故でしょうね。
自転車で登ると、頬をなでていく風が違います。
苦しんだ末に眺めると
感受性が上がるのかもしれません。
車で登ってきた人たちには感じる事の出来ない何かを
私達は感じる事が出来るのかもしれませんね。