最終ラップで奇跡は起こった! |
ホームストレートで「脚が売り切れた」と叫んだところからです。
左脚内側広筋が痙攣して16周目からの数周は
私はママチャリの選手とデッドヒートを繰り返していました。
ママチャリと言ってもいくらかは手を加えられています。
結束バンドで取り付けられたボトルゲージ、
クイックが付いた前輪、前かごには補給食が入れてあります。
ハンドルを持つと前傾姿勢をとりにくいからでしょう、
かごをハンドルの様に握って前傾姿勢をとっていました。
下りや平坦路で抜き返す・・・
いや、もしかしたら下りや平坦路では後ろにつかれていたのかもしれません。
16周目のラップタイムはついに9分2秒3・・・
先頭集団に乗って、せっかく稼いだタイムを大量に浪費する。
心拍計から表示されるラップタイムを見て焦る。
精一杯走っても8分台を維持するのがやっと。
小集団に加わろうと思っても、このスピードなら加わる集団さえも見つかりません。
一人旅を余儀なくされコースの左端を走行します。
「雪・・・」
そして、垂れ下がっていたコース上の吹き流しが泳ぎ始めました。
「風・・・」
上がりかけていた気温がまた低下しはじめました。
ジャージの袖を通して気温の変化を感じます。
ちらつく雪は孤独な戦いを演出する絶好のシチュエーションに思えました。
19周目、ついに右脚の内側広筋、外側広筋が痙攣。
これで左右両方の大腿四頭筋は使い物にならなくなりました。
ダンシングをしようものならいつでも痙攣を繰り返しそうな気配です。
19周目のラップタイムは、また9分を越えて9分4秒6・・・
先頭集団のペースは1周5分40秒
前回の天満屋のレースでの私のペースは6分30秒~7分
あまりにも違い過ぎるラップタイムに愕然とします。
レースの中盤が精神的に一番苦しい。
乳酸は蓄積されているのにゴールは遠いからです。
コース脇には脚を痙攣させて
ロードバイクを降りてしまった選手達があちこちに現れ始めていました。
ある者は途方に暮れて、またある者は痛みに表情をゆがめて・・・
ロードバイクを降りてしまえば、もうおしまい。
もう復帰する事は出来ない気がしていました。
どんなに痙攣しても脚を回し続ける。
絶対に脚を止めてはいけない。
回し続けていれば回復する瞬間はやってくる。
そして、私は丸に臨の字を背中に背負った
チームジャージを着ています。
誰がどう見ても臨時漕会のメンバー。
どんなに遅くてもレースをあきらめる事は出来ないのです。
岡山国際サーキットが砂漠の様に広く感じました。
アトウッドカーブを越えてからコントロールラインまでの緩やかな登りが長い長い・・・
その時です。
後方から声がしました。
「コギコギさぁ~ん」
なんと、レース前に少しお話ししたボーンズさんではありませんか!
「コギコギさん、やっぱり速かったっすね」
「あ~先頭集団に乗って行けるところまで行く作戦だったから・・・
今は大腿四頭筋が売り切れて・・・ご覧のあり様」
「私も大腿四頭筋は早々に売り切れましたよ・・・
じゃ、お互い頑張りましょう!」
会話している間だけ笑顔を浮かべる事が出来ました。
会話している間だけでも巡航速度がアップしました。
ボーンズさんを見送ってしばらくして
後ろから誰かにポンと肩をたたかれました。
「おう、行くでぇ~」
今度は臨時漕会エースのYKさんが私を追い越す時に声をかけてくれたのでした。
一瞬のうちに私を追い越して行きましたが、
私に声をかける事に力を割いてくれたのです。
更にもう一人、
コースの外から応援してくれた人がありました。
「コギコギさん!頑張って!」
カメラを構えたその人は7時間チームにエントリーしてたぴよぴよさんでした。
出番の合間に仲間の撮影がてら私に声をかけてくださったのです。
孤独に思えたコース上にも私の応援団はいたようです。
そして、ホームストレートに戻ってくると彼女達の応援があります。
ママさんチャリダーさんが
「行けぇ~!」
と叫んでいました。
よく、マラソン選手がレース後のインタビュー等で
「沿道の皆さんの声援が後押ししてくれました」
などとコメントしているのを耳にしますが
アレは本心から言っているものだと断言できます。
例えボロボロになっていたとしても、ほんの短い応援の言葉に
(よし!あと一人、追い越してやろう)という気持ちになれる。
人間とは非常にメンタルな生き物なのです。
両足の大腿四頭筋が売り切れて
私に残された残存能力は何だろう?
下り基調の平坦路と下りコーナーはまだ勝負できる。
そこで少しでもタイムを稼ごう・・・
風向きがくるくる変わっている。
ホームストレートとバックストレートはとにかく誰かの後ろについて体力を温存しよう。
(自分が納得できるレースをしてきなさい)
おばさんの言葉が再び頭をよぎります。
些細な努力をしたところで、
脚が売り切れてしまっているのにどれだけのタイムが稼げるというのか?
そう、問題はどれだけタイムが稼げるかと言うよりも
どれだけ自分が納得できるレースを出来るかなのです。
目の前にいる選手の後ろに喰らいついて行く・・・
最後まで闘争心を失わないで走ろう。
コース脇にうずくまる選手達、
その脇を漂う様に走り続ける私・・・
私を次々と追い越して行く選手達・・・
思えば前回のレースは追い越す側だったよなぁ・・・
天満屋ハピータウンカップの最終ラップは6分15秒。
しかしながら今回のレースでは27周を過ぎると9分台を連発し始めました。
先頭集団に乗って稼いだタイムなど、とうの昔に使い切りました。
矢も折れ、刀も折れて、なおも闘い続ける侍の様に
丸に臨の字を背負ったジャージに身を包んだ私は、
よろよろと走り続けていました。
「コギコギさん!大丈夫っすか?
私が前を引きましょうか?」
声を掛けてくれたのは、またしてもボーンズさんでした。
あまりの失速ぶりに心配して声を掛けてくれたようです。
「ありがとう!でも君は君のレースをしてくれ!
俺にかまわず、行ってくれ」
彼の後ろについたとしても付いていける力は残っていなかったでしょう。
たとえ前を引いてもらったとしても、速度が遅すぎて
ドラフティングの恩恵を得られたかどうか・・・
心配していただいた気持ちだけ受け取って先に行ってもらいました。
レースも終盤になってくると自分のラップタイムと残り時間から
あと何周すればゴールできるかが見えてきます。
アベレージを見れば大体の順位も見えてきます。
プラス1周出来るかどうかの瀬戸際のタイムなら
終盤にスパートをかけなければなりませんが
幸いなことに私の計算ではスパートは必要ないようです。
正真正銘のラストラン・・・
あとはゴールするのみ・・・
その時、奇跡が起こりました。
うしろから聞き慣れた声がしてきました。
「うぉ~コギコギさんじゃないか!」
なんと臨時漕会エースのYKさんではありませんか!
練習を共にしてきたパートナーに最終ラップで合流出来るなんて!
数えきれないほどの選手が走っているサーキットで
最終ラップで出会えるなんて凄い確率です。
「私は1時間、先頭集団にいたよ」
「私は30分、いました。お陰で脚が売り切れてボロボロです」
「私も同じ、ボロボロになったよ。
最後、丸に臨の字のジャージを探して走っていたよ」
「私、周回数は確定しました。
YKさん、もしよかったら一緒にゴールしませんか?」
「私も周回数は確定だ。
腕でも組んでゴールするか?」
「あ~それ無理無理」
出合えばすっと練習の時と同じ気持ちになれる。
過酷な状況にあって冗談が言える。
今回のレースの作戦は
「先頭集団に乗って行けるところまで行く」
臨時漕会列車は形成せずに単独で戦う事になっていました。
それがゴールを共に出来るとは・・・
アトウッドカーブからコントロールラインまでの緩やかな登り。
脚が売り切れてからというもの、砂漠の中を進むように長く感じたものでしたが
YKさんとゴールに向かえば苦しさ半減です。
最終ラップのタイムは8分6秒2・・・
最後の40分間で最も速いラップタイムでした。
ゴールは奇跡的に丸に臨の字のチームジャージ2人が並んで入りました。
走行距離…116.67km
時間…4:05:55
平均速度…28.46km
最高速度…57.76km
積算距離…18732km
消費㌍…2347kcal
補給食…1160kcal
心拍…Avg.148 Max.177
レースリザルト・・・・79位/197人 32周-10Laps 29.08km/h
ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。
レースは単独で戦いましたが
多くの人々の応援があってこその完走でした。
単独であって単独でないような気持ちです。
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今回のレースでは本当にa(一人の)-elf(小さな妖精)が魔法を使ってくれたのかも(ナンチャッテ
何はともあれ『お疲れ様でした』
また是非臨時漕会プラスワンで走りましょうp(^^)q
皆さん お疲れ様でした! そして…これ以外の言葉は思い付きません。みんな
『男・前!』\(^o^)/
一人のときも、そうでないときも、スポーツはやって、見て、応援して、全てが楽しい&嬉しいですね。
そしてボーンズさんにはボーンズさんのドラマがあったはず。
コース上でボーンズさんにかけてもらった言葉は力になりました。
ありがとうございます。
もちろん私も一緒に走る日を楽しみにしています。
戦ってみたいですねぇ~
レースリザルトに臨時漕会、臨時漕会、臨時漕会・・・
と並んで、チーム賞もらう・・・
そんな事、出来ればいいなぁ・・・
先頭集団に乗って行けるところまで行って
自分は30分先頭集団に残れるという事が分かっただけでも
大きな収穫でした。
しぼっても何も出ないところまで出したと思います。
今回のレースでは一度もフェロモンドラフティングしなかったんですよ!
えらかったでしょ